ダンパーペダル踏むタイミング | ピアノが上達する練習法
ダンパーペダルを踏むとレガートに弾きやすいからといって、その結果、聴き苦しくなってしまっては音楽とはいえません。
ペダルを踏むタイミングによって、ピアノの音ににごりが出たり、音色が変わってしまうからです。
ピアノの「ダンパーペダルを踏むタイミング」について考えてみたいと思います。
1.倍音
倍音とは、元になる音の振動数に対して、整数倍の振動数を持つ音のことです。
元になる音の2倍の振動数を持つ音は1オクターブ上の音になり、3倍になると1オクターブと完全5度上の音になります。
「ド」を元の音とするとその倍音は「ド・ソ・ド・ミ・ソ・シ♭・ド・レ・ミ・・・」となります。
弦が持つ振動数は、弦の重さ、長さ、張力に比例します。
重くて長い弦であり、張力が弱いほどゆっくり振動し、軽くて短い弦であり、張力が強いほど速く振動しますが、グランドピアノの弦を見ればそのように作られているのがよくわかります。
2.ピアノの弦と共振
音叉の片方を叩くと、別の棒が振動しますが、これを共振といいます。
音叉の場合は同じ太さ、同じ長さですので、同一の振動数を持つ棒が共振しているのですが、倍音にあたる振動数を持つものも音叉のように共振します。
ピアノでいうと、「ド」を鳴らした時、その倍音の振動数を持つ「ド・ソ・ド・ミ・ソ・シ♭・ド・レ・ミ・・・」の弦が共振するのです。
3.鍵盤を打鍵した時のピアノの動き
ピアノの弦は、鍵盤をおさない状態では、ダンパーで押さえられていてミュート状態にあります。
鍵盤を押さえると、ダンパーが上がって弦は開放状態になり、ハンマーが動いて弦をたたき、音が鳴ります。
鍵盤から指を離すと、ダンパーが下がって弦の振動が抑えられてミュート状態となり、音が止まります。
ダンパーペダルを踏まない状態では、倍音にあたる鍵盤をおさえていない限り、共振は発生しません。
4.ペダルを踏むタイミング
レガートペダルの場合、この共振をなるべく抑えるタイミングでペダルを踏まなければ、音がひどくにごってしまうことになります。
例えば左手のベースラインが「ファ→ミ」のような動きをする時、ダンパーペダルを踏みっぱなしだと、ファを鳴らした時には「ファドファラドミ♭ファソラ・・・」が共振し、ミを鳴らした時には「ミシミソシレ♭ミファ#ソ#・・・」が共振しますので、ダンパーが上がったままだと、これらすべての音が共振してしまうことになります。
左手のオクターブ奏法で「ファ→ミ」と弾く場合、どうしても指の動きだけではレガートに弾くことができないためペダルを使用しますが、ファからミに変わる直前にペダルを踏み、ミの音を弾いたあと、すぐにペダルを離すか踏みなおすようにします。
ファを弾いた後、ミに変わる直前にペダルを踏むのは、共振をできるだけ抑えるためです。
ピアノの音は打弦時の音量が最も大きく、その後急速に減衰しますので、減衰した状態でダンパーペダルを踏んでも打弦時ほど強い共振は発生しません。
また、ミに移ってからペダルを離す、または踏みなおすのは、ファの音が鳴っている時にペダルを踏むことによって発生した共振を抑えるためです。
これにより、ペダルによる音の濁りを抑えることができます。
ペダルのこのような動きは、手の動きと足の動きをゆっくりと確認するような練習法で習得することができます。