脱力の練習法 | ピアノの上達法
ピアノで速いパッセージを演奏するとき、がんばらなきゃと思ってついつい指や手に力が入ってしまいますが、力が入ると柔軟な動きの妨げになったり、痛みの原因になったりします。
そこでポイントになるのが脱力です。「脱力の練習法|ピアノの上達法」で脱力について学んでみましょう。
1.脱力の重要性
ピアノは打鍵すると同時にハンマーが動いて弦をたたいて音が鳴り、鍵盤を元に戻すとダンパーが下がって弦の振動が止まります。
ハンマーが動くスピードは打鍵する速さになりますので、音を大きくしたい場合は鍵盤を速く押し込み、小さい音を出す場合は、鍵盤をゆっくり押し込みます。
ピアノの音に人為的な作用を加えられるのは打鍵時と、鍵盤から指を離す時だけです。
つまり鍵盤を押さえている間は、鍵盤が上がらないようにするだけで十分であり、鍵盤が上がらないようにするには手の重みで十分であるため、指には手の形を崩さないように保つだけの力があれば十分だということになります。
打鍵時の鍵盤にかかる重さの推移を計測した研究によると、プロとアマチュアでは、打鍵時から脱力までの時間に0.5秒の差があることが明らかになりました。
たかが0.5秒と思うかもしれませんが、一つの音について0.5秒ですので、1曲を弾くのにいくつ鍵盤を押さえるか、1日の練習でどのくらい鍵盤を押さえるかと考えてみた時、この差はとてつもない差になります。
0.5秒以上の差があるということは、0.5秒以下の長さの音符を弾く時、アマチュアはずっと力を入れ続けていることになります。
これでは速い動きもパッセージでは手が痛くなってしまうし、手が痛くなってしまえば練習を続けることもできず、練習ができなければなかなか曲を弾きこなすせるようにはならないため、途中で諦めてしまうことにもつながります。
脱力を意識しながら練習することは、軽やかに速いパッセージを弾けるようになれること、練習を長く続けられるため、速く曲を弾きこなせるようになり、どんどん楽しくなるという好循環が得られます。
2.脱力の方法
指揮法の授業で、ひたすら脱力の練習をするという話を聞いたことがあります。
いわれてみれば指揮者の腕はがちがちには固まっていないし、美しくしなやかで自然に動いています。
指揮法の練習では腕を垂直にあげた状態から肘を伸ばしたまま自然に落下させるそうですが、ピアノの脱力の練習も同じようにすることができます。
1.腕の脱力
布団の上で仰向けになって、腕を垂直にあげます。その状態から腕を支えている筋肉を弛緩させ、肘を曲げずに足のほうに向かって手を落とします。
2.肘の脱力
仰向けのまま、肘を布団につけて、肘から先だけを垂直にあげます。そこから肘を支えている筋肉を弛緩させ、足のほうに向かって手を落とします。
3.手首の脱力
肘の脱力と同じ姿勢から、手首を支えている筋肉を弛緩させ、手首だけ落とします。
4.指の脱力
肘の脱力と同じ姿勢から、指をまっすぐに伸ばしてから、手の甲に入っている力を脱力させ、指の付け根の関節から手の内側に指を落とします。
3.鍵盤を弾く時に指を支えるための瞬間的な力
それぞれの筋肉の脱力を体感した後、ピアノの鍵盤を弾く時に瞬間的に必要な支える感覚を覚える練習です。
同じように腕、肘を落とすのですが、その際、布団に手が触れる時、手のひらを下にしてピアノを弾くような形にして、その形が崩れないように瞬間的にささえます。
支えた後、すぐに力を抜きます。力を入れるのは指が布団に触れた瞬間であって、布団の上に着地したら、瞬間的に力をいれて、その後は指の形を保つだけのわずかな力だけを残して脱力します。
あまり強くたたきつけてしまうと痛めて親切な手指を痛めてしまうかもしれませんので、自分にあった部分を布団の上で練習してみてください。